前回は、SEO対策について解説しました。まだ読んでいない方は、そちらから読むことをお勧めします。今回は、財務スキルについて解説していきます。財務スキルとは、簡単にいうと、経営に関わるお金をしっかりと数字に落とし込むスキルです。財務スキルと聴くと難しそうというイメージがあるかもしれませんが、これを読めばしっかりと理解できるようになります。
財務スキル
PL・BSとは
財務スキルには2つ重要な指標があります。
- 損益計算書(PL)
- 貸借対照表(BS)
の2つです。
損益計算書とは、一定期間の成績表(利益)です。例えば、1年間でいくら利益を出したかということです。損益計算書はPLと言います。
貸借対照表は、一時点の財政状態の指標です。期末時点(一期目、二期目など)に会社に存在する財産の状態や会社資金の調達と運用の状況を表します。貸借対照表はBSと言います。
今回は、PLについて解説します。次回、BSについて解説します。
損益計算書(PL)
PLを分解



PLを分解するとこのように分けることができます。青色が収入の部分、赤色が支出の部分、黄色が利益になります。



このPLをみて化粧品会社(資生堂のPL)はどれか分かりますか?おそらくまだわからないと思います。PLが分かるようになれば、どのように企業が利益(または損失)を出しているのかが分かるようになり、自分が経営する時に役に立つだけでなく、投資ができるようにもなります。
利益の種類
PLには次の利益の種類があります。
- 売上総利益
- 営業利益
- 経常利益
- 税引前当期純利益
- 当期純利益
難しい言葉が並んで嫌になりますが、最後の当期純利益は、最終的に残る利益のことなので、実際には上から4つの利益がなんなのか覚えれば良いです。
売上総利益



例えば、カフェを経営しているとします。カフェの本業は、飲食店なのでコーヒー、その他ドリンクやご飯を売ることです。単純にコーヒー1杯を売ったとしましょう。コーヒーの商品原価50円、販売対価100円とすると、1杯売れたときの商品粗利は50円です。これが、本業の利益になるので、売上総利益になります。2杯売れれば、売上総利益は100円になります。
会計は、難しい単語を使いがちですが、本質はとても単純です。
営業利益



先ほど解説した売上総利益から販管費を差し引いたものが、営業利益になります。
販管費とは、商品を販売するための間接的なコストのことを言います。先ほどのカフェを例にとると、コーヒーを売るために必要な従業員、広告、賃料などの間接的コストが販管費になります。
なので、全ての売上から、売上原価(コーヒー豆)と販管費(人、場所、広告)を引いたものが営業利益になります。
経常利益



経常利益とは、本業以外で毎月継続的に発生する利益のことです(一時的ではない)。下図の営業外収益のことです。
例えば、カフェの場合、毎月カフェをイベントスペースとして貸し出し利用料を得る、コーヒーの入れ方のレッスンを行ってレッスン料を得るなどが挙げられます。レッスンやイベントスペースとしての貸し出しは、カフェの本業ではありません。
なので、毎月レッスンを行った場合、売上高(コーヒーなどの売上)+営業外の収益(レッスン料)から売上原価(コーヒー豆など)、販管費(人、場所、広告)を引き、営業外費用(例:レッスンを行うための外部講師の費用)を引いたものが経常利益になります。
税引前当期純利益



税引前当期純利益とは、先ほど説明した本業以外の毎月継続的に入る利益ではなく、突発的に単発で入る収益や費用のことです。
例えば、カフェでのキッチンの故障、店舗の売却などです。これらは、継続して入るものではなく、単発で突発的な損益です。
売上高(コーヒーなどの売上)+営業外収益(レッスン料)+特別利益(店舗売却)から売上原価(コーヒー豆など)、販管費(人、場所、広告)、営業外費用(外部講師の費用)、特別損失(キッチン故障)を引くと税引前当期純利益が出てきます。
当期純利益



まとめると、図のグラフを左から右へみてください。一番左に売上があります。その売上から売上原価(コーヒー豆の原価)を引いて売上総利益になります。そこから、販管費(人、場所、広告)を引くと営業利益になります。そこから、毎月発生する利益にかかるコスト(外部講師の費用)を引くと経常利益になります。そこから、突発的な損失(キッチン故障)を引くと税引前当期純利益になります。そして最後に、税引前当期純利益に法人税がかかり、当期純利益になります。これが会社に残るお金になります。
まとめ



損益計算書(PL)とは、特定の期間における会社の経営の成績表です。収益は、売上(本業の売上)+営業外収益(本業以外の毎月発生する売上)+特別利益(突発的な売上)です。費用は、売上原価(本業に関わる原価)+販管費(販売に必要な費用)+営業外費用(本業以外に関わる費用)+特別損失(突発的な費用)です。そして、利益は、収益−費用です。非常に簡単です。
それでは、最初に出した問題を解くことができるでしょうか。



わからない場合は、少し資生堂についてイメージしてみてください。
資生堂のイメージ
- 化粧品の原価って安いって聞いたなぁ
- 全国のデパートに美容部門を配置しているよなー
- CMで女優が多く宣伝しているな
- メーカーの利益率ってこんなに高いっけ
それでは、一つ一つ考えてみましょう。



化粧品の原価が安いとわかっていた場合、売上原価に注目します。そうすると、③がありえないことに気づくことができます。しかし、②と③は似たような数字なので断定することはできません。
次に、全国のデパートに美容部門を配置、CMで女優が多く宣伝していることに注目します。



販管費が非常に多くかかることに気づくことができると思います。なので、②が答えではないかと推測することができます。
最後に、メーカーの利益率に注目します。



利益率を見ると、①は約50%もあります。CMに大女優を起用して利益が50%も残るとは考えにくいです。②を見ると、8%なので現実的な数字だと分かります。なので、答えは②ということが分かります。
ちなみに、①は、フェイスブックです。IT企業なので、原価や販管費を抑えることができ、約50%の利益率を出しています。③は、ぴあです。チケット販売の会社です。チケットを仕入れて、少し上乗せして売っているので売上原価が非常に高い割合を占めています。少し上乗せしているだけなので営業利益の割合が低いです。
このように、業界ごとにどんなPLかを理解することは非常に大事です。例えば、ITだったら利益率50%くらい、化粧品会社だったら8%くらいだということがわかっていると経営の見方や投資先の見方を得ることができます。
次回は財務スキル「貸借対照表の見方」について、解説していきます。
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